英調査会社Rho Motion(ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス傘下)が公表した最新データによると、2026年7月の世界のEV(BEV・PHEV)販売台数は前年同月比9%増の185万台でした。ただし内訳を見ると、中国は微減、欧州は33%増と急伸、北米は27%減と、地域によって明暗がくっきり分かれています。同じタイミングで、日本国内の輸入車市場ではテスラを中心にEVの登録が7カ月連続で増加しており、国・東京都のEV補助金拡充も重なって新車の実質価格が下がっています。世界的なEV需要の地殻変動が、日本の中古テスラ・輸入EV市場にどう波及しつつあるのかを整理します。
※ 情報の鮮度について:世界のEV販売データは英Electrekが2026年8月12日に報じたRho Motion調べの数値を一次情報としています。本稿公開までの経過時間は4日程度のため、速報ではなく「直近の動きの解説」として扱います。日本の輸入車販売データは日本自動車輸入組合(JAIA)が2026年8月6日に発表した7月分の統計(日本経済新聞報道)によります。
何が起きたか:世界のEV販売、7月は地域で明暗
Rho Motionの集計では、2026年7月の世界のEV販売台数は185万台(前年同月比+9%)で、2026年1〜7月の累計は1150万台(前年同期比+4%)でした。地域別では次のように分かれています。
| 地域 | 2026年7月の販売台数 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 中国 | 98.0万台 | ▲5% |
| 欧州 | 45.0万台 | +33% |
| 北米 | 14.0万台 | ▲27% |
| 世界計 | 185.0万台 | +9% |
※ 数値はRho Motion(Benchmark Mineral Intelligence)調べ・Electrek報道(2026年8月12日)による参考値です。中国・欧州・北米の合計は「その他地域」を含まないため世界計とは一致しません。

欧州は補助金の押し上げ効果で伸びが続く一方、北米は米国の連邦EV税額控除が失効した影響で大きく落ち込んでいます。中国は前年同月をやや下回ったものの、年前半の弱さからは持ち直しの兆しがあるとみられています。世界全体としては9%増とプラスを保っていますが、その中身は「欧州が北米の落ち込みを穴埋めしている」という構図に近く、単純に「EVが世界的に伸びている」と言い切れる状況ではなくなってきています。
日本の輸入EV市場は7カ月連続増、テスラが牽引
こうした世界的な地域差の中で、日本の輸入車市場は独自の動きを見せています。JAIAが8月6日に発表した7月の輸入車(国産車を除く)新規登録台数は次の通りです。
| 項目 | 2026年7月 | 前年同月比 |
|---|---|---|
| 輸入車全体 | 1万7079台 | ▲10% |
| うちEV | 3056台 | +28%(7カ月連続プラス) |
| うち「その他」区分(テスラが大半) | 1994台 | +95% |
| 輸入車に占めるEV比率 | 18% | +5ポイント |
※ 数値はJAIA(日本自動車輸入組合)発表・日本経済新聞報道(いずれも2026年8月6日)による参考値です。テスラは単独ブランドとしてJAIA統計に集計されないため、「その他」区分からの推定です。
輸入車全体は前年同月比10%減と振るわない一方、EVだけは7カ月連続でプラスを維持し、輸入車全体に占める比率も18%まで上がりました。中でも目立つのが、テスラの大半を占めるとみられる「その他」区分の伸びで、前年同月比95%増の1994台まで拡大しています。ブランド別トップは引き続きメルセデス・ベンツ(3714台)ですが、EVという切り口で見るとテスラの存在感は着実に増しています。
なお、6月の「その他」区分(3997台、前年同月比約2.8倍)と比べると7月は台数そのものは減っています。これは6月が四半期末にあたり、テスラは四半期末に納車を集中させる傾向が世界的に指摘されているためとみられ、7月単月の減少をもって勢いが弱まったと判断するのは早計です。前年同月比で見る限り、増加基調そのものは続いています。
CEV補助金拡充で新車の実質価格が下がった
テスラを含む輸入EVの登録が伸びている背景には、国・東京都のEV補助金拡充があります。国のクリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)は、2026年1月1日以降に新規登録した普通EVの上限額を90万円から130万円に引き上げました。さらに東京都も2026年6月24日、都独自の「ZEV車両購入補助金」の上限額を、2026年7月1日以降に初度登録したEVについて100万円から130万円へ引き上げると発表しています。単純に合算すると、東京都内でEVを新規登録する場合の補助金は最大260万円まで積み増せる計算になります(※ 実際の補助額は車種ごとのGX評価方式による審査結果で変動し、上限額を満たすとは限りません)。
テスラの日本での車両本体価格自体は2026年に入ってから大きな改定はなく、Model 3 Premium RWDは531万3000円、Model Y Premium RWDは558万7000円のままです(※ 2026年8月時点の公式価格による参考値)。つまり今回の実質価格の低下は、テスラ自身の値下げではなく、補助金制度の拡充によるものという点は押さえておく必要があります。条件を満たす購入者にとっては、本体価格が変わらないまま実質負担額だけが下がった形で、これが新車需要を押し上げている要因の一つとみられます。
中古テスラ・輸入EVの相場への影響は
中古のモデル3・モデルYの相場は、価格比較サイトの集計でモデル3が平均289万円前後(187万〜640万円)、モデルYが283万〜792万円というレンジで推移しています(※ 中古車情報サイトの掲載価格をもとにした参考値で、実際の取引価格は個体差により変動します)。ここで注意したいのが、新車との距離です。Model 3 Premium RWDの531万3000円から、国と都の補助が上限まで出た場合の260万円を引くと、実質負担は270万円台まで下がる計算になります。これは中古モデル3の平均289万円前後を下回る水準で、条件が揃えば「中古より新車のほうが安い」が成立しうるということです(※ 補助額は車種ごとの審査結果で変動し、上限額を満たすとは限りません。実際には上限を下回り、負担がこれより増えるケースのほうが多くなります)。
これは中古テスラを売る側・買う側の双方に関係します。売る側にとっては、新車の実質価格が下がったことで「同じ予算なら新車を選ぶ」という選択肢が現実味を増し、程度の良い中古車ほど早めに動いた方が競合が少ない可能性があります。買う側にとっては、年式が古い・走行距離が多いなど価格が抑えられた個体であれば、補助金適用後の新車との価格差は依然として大きく、割安感は残っています。ただし上位グレードや低走行の中古個体は、補助金適用後の新車の実質負担を上回ることもある点は意識しておくべきでしょう。
なお、補助金は新規登録時の1回限りで、中古車の購入には基本的に適用されません(一部自治体で中古EVを対象とした独自補助がある場合を除く)。この点も新車と中古車を比較する際の前提として押さえておいてください。
読者はどうすべきか
- 中古テスラの売却を検討している方:新車の実質価格が下がったことで、程度の良い個体・上位グレードは今後相対的に見劣りしやすくなる可能性があります。査定診断で現在の推定価値を確認しておくと判断しやすくなります。
- 輸入EVを予算重視で探している方:補助金は新規登録時のみ適用されるため、中古車では基本的に対象外です。予算シミュレーターで、新車の補助金適用後価格と中古車の総額を並べて比較することをおすすめします。
- 新車テスラと中古モデル3・モデルYで迷っている方:車種比較でグレード・年式ごとのスペックと価格差を確認してください。
- 輸入EV全体の買い時を見極めたい方:世界のEV販売は地域差が大きく流動的です。買い時マップで市場動向を踏まえたタイミングを確認してください。
BYDの軽EV「RACCO」とCEV補助金の関係についてはBYD「RACCO」受注1000台突破、日産サクラなど中古軽EVへの影響は、テスラの中古購入時のチェックポイントについてはテスラ「モデル3・モデルY」120万台を米NHTSAが調査、中古購入前に確認したい3つのポイントもあわせて参考にしてください。
まとめ
- Rho Motionの調べで、2026年7月の世界のEV販売は前年比9%増の185万台。ただし中国は微減・欧州は33%増・北米は27%減と地域差が大きく、北米の落ち込みは米連邦EV税額控除の失効が主因とみられます
- 日本の輸入EV市場はテスラが牽引する形で7カ月連続増加。7月の「その他」区分(テスラが大半)は前年比95%増の1994台でした
- 背景には国・東京都のEV補助金拡充があり、東京都内では合算で最大260万円まで補助が積み増せる計算になります。テスラの車両本体価格自体は据え置きです
- 中古モデル3の平均は289万円前後で、補助が上限まで出た場合の新車Model 3の実質負担(270万円台)を上回ります。売る側は早めの判断、買う側は年式・グレードごとの価格差を意識した比較が有効です
なお、実際の取引価格・補助金額は個体の状態や居住自治体、審査結果によって変動します。売買を検討する際は最新の相場情報と補助金制度をあわせてご確認ください。