米運輸省道路交通安全局(NHTSA)は現地時間2026年7月29日、テスラ「モデル3」(2018〜2020年式)と「モデルY」(2021〜2023年式)の一部について、フロントサスペンションの部品脱落の恐れがあるとして予備調査(PE26006)を開始したと発表しました。対象は米国だけで約119万8,300台という大規模なものです。まだ「リコール」ではなく「調査」の段階ですが、日本でもテスラの新車登録は直近急増しており、対象年式の中古車を検討している・すでに所有している読者にとっても無関係な話ではありません。この記事では一次情報にもとづいて何が起きているのかを整理し、中古で買う・持っておく場合の確認ポイントに落とし込みます。

※ 一次情報の日付は2026年7月29日(米国時間)。本稿執筆時点(2026年8月4日)で約1週間が経過しており、続報が出ていないか各自でも最新情報を確認してください。

NHTSAの予備調査とは何か

NHTSAの「予備調査(Preliminary Evaluation)」は、リコールの前段階にあたる手続きです。消費者からの苦情や事故報告をもとに、メーカーに原因・範囲の報告を求め、必要と判断されればリコールに格上げされます。逆に、調査の結果「対策不要」と結論づけられて打ち切られるケースも珍しくありません。今回はこの「調査」段階であり、現時点でテスラ・NHTSAのいずれからも正式なリコール(是正措置)は出ていない点をまず押さえておく必要があります。

NHTSAの資料によれば、今回の調査のきっかけは「フロントロワーラテラルリンク」(前輪の位置決めを担うサスペンション部品)が脱落したという156件の苦情です。多くのオーナーが前兆となる警告なしに発生したと報告しており、脱落すると走行方向のコントロールを失う恐れがあるとされています。段差通過時や低速での据え切り時に前輪まわりから異音(ガタつき・きしみ音)が出たり、ステアリングの感触やホイールアライメントが急に変化したりするのが、報告されている主なサインです。現時点で本件に起因する事故・負傷は確認されていないとNHTSAは説明しています。

NHTSAの調査は一般に「予備調査(PE)→本調査(EA)→リコール」という段階を踏みます。PEの段階で対策不要と判断されて打ち切られることもあれば、数ヶ月〜1年以上かけてEAに格上げされ、最終的にリコールに至ることもあります。現時点ではPE26006が始まったばかりで、テスラ側の原因調査・回答を待つ段階です。「調査が始まった=すぐに大規模リコールになる」と決めつけるのは早計ですが、対象範囲が広いだけに、今後の展開は注視しておく価値があります。

数字で見る調査の規模

今回の調査対象は、過去にテスラが実施した関連リコールと比べても桁違いの規模です。

区分対象台数(参考)内容
今回の予備調査(PE26006・2026年7月29日開始)約119万8,300台2018〜2020年式モデル3、2021〜2023年式モデルY
過去のリコール(21V-835)2,791台2019〜2021年式モデル3の一部
過去のリコール(23V-235)422台2018〜2019年式モデル3の一部

NHTSAは、今回報告されている不具合は過去2件のリコールの原因となった製造上の問題とは別物とみられる、としています。つまり「過去に直したはずの不具合がぶり返した」のではなく、より広い範囲で新たに疑いが持たれている段階です。テスラは今のところ本件について公式コメントを出していません(報道時点)。

※ 数値はNHTSA公表資料・複数の海外報道による参考値です。調査の進行にともない更新される可能性があります。

日本の中古テスラ市場への影響は

テスラは日本国内でも急速に台数を伸ばしています。日本自動車輸入組合(JAIA)の2026年6月度速報によると、輸入乗用車のブランド別集計でテスラの大半を占めるとみられる「その他」区分が3,997台となり、前年同月(1,407台)の約2.8倍に拡大。輸入車全体の登録台数2万6,445台(前年同月比6%増)の約15%を占め、単月では首位のメルセデス・ベンツ(4,512台)に次ぐ規模になったと報じられています(※テスラは単独ブランドとしてJAIA統計に集計されないため、この数字は「その他」区分からの推定です)。5月にはモデルYが輸入車の車種別登録で単月1位になったとの報道もあり、日本での存在感は着実に増しています。

つまり、今回の調査対象と重なる年式・型式の車両は、日本の中古車市場でもこれから流通量が増えていく段階にあります。中古のモデル3・モデルYの相場は、価格比較サイトの集計でモデル3が平均289万円前後(187万〜640万円)、モデルYが283万〜792万円というレンジで推移しています(※中古車情報サイトの掲載価格をもとにした参考値で、実際の取引価格は個体差が大きく変動します)。現時点でこの調査を理由に相場が大きく動いた形跡はありませんが、リコールに格上げされた場合は対象個体の商品性・買取査定に影響が出る可能性はあります。

なお、本稿執筆時点で国土交通省から本件に対応する国内リコール届出は確認できていません。過去にテスラ モデルYのシートベルト固定金具などで国内リコールが届出された例はありますが、今回のサスペンション関連調査とは別件です。国内での動きが出た場合は、続報として改めて扱う予定です。

中古で買う・持っている場合の確認ポイント

対象年式のモデル3・モデルYを中古で検討している、またはすでに所有している場合、次の3点を確認しておくと安心です。

  1. 試乗時に段差・低速旋回でのチェックを — 前輪まわりからのガタつき・きしみ音、直進時のふらつきがないかを確認します。特に低走行の個体でも起こりうる報告のため、年式・距離だけで安心せず実車確認を優先してください。
  2. 販売店にリコール・調査対応の有無を確認 — 現時点では対応不要な「調査」段階ですが、今後の展開次第で無償点検・部品交換の案内が出る可能性があります。購入時に販売店へ最新のサービスキャンペーン情報を確認しておくと、後から慌てずに済みます。
  3. 保証・アフターサービス体制を確認 — 中古で購入する場合、メーカー保証の残存期間や、テスラの正規サービスセンターへのアクセスのしやすさも判断材料になります。とくに輸入台数が急増している地域では、点検・整備の予約が混みやすい傾向も指摘されています。
  4. 年式・製造時期の把握 — 対象は「モデル3の2018〜2020年式」「モデルYの2021〜2023年式」という比較的幅広いレンジです。該当年式かどうかはテスラアプリの車両情報や車検証の初度登録年月から確認でき、販売店に問い合わせれば製造時期も含めて教えてもらえます。年式だけで一律に避ける必要はありませんが、該当する場合は上記1・2の確認をより丁寧に行うと安心です。

いま所有している方は、当サイトの査定診断で現在の推定売却価格を確認しつつ、今回のような調査報道が出た直後に慌てて手放す必要があるかどうかを見極めるのがおすすめです。購入を検討している方は、比較ツールで同価格帯の他モデルとあわせて確認しつつ、買い時の目安もチェックしてみてください。

まとめ

  • NHTSAが2026年7月29日、テスラ モデル3(2018〜2020年式)・モデルY(2021〜2023年式)計約119万8,300台を対象にサスペンション部品脱落の疑いで予備調査を開始
  • 156件の苦情が発端。現時点で事故・負傷の報告はなく、リコールではなく調査段階
  • 過去の関連リコール(2,791台・422台)と比べて対象規模が大きく異なり、原因も別物とみられる
  • 日本でもテスラの登録は急増中(2026年6月は前年同月比約2.8倍)で、対象年式の中古車は今後も流通が増える見通し
  • 中古で検討・所有している場合は、試乗時の異音チェックと販売店への最新情報確認を

続報が出た場合は、国内リコールの有無も含めて改めて取り上げます。