2026年8月前半(8月1日〜13日)は、国内の主要自動車メーカー7社が2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月期)決算を出そろわせた「決算ラッシュ」の2週間でした。トヨタ・ホンダ・スズキ・三菱自動車は前年同期比で大幅増益、日産・マツダも赤字から黒字へ転換しましたが、スバルだけが唯一の最終減益となり、明暗が分かれています。さらに同じ期間に、7月28日の熊本地震による生産停止(ホンダは8月19日まで継続中)や、トヨタ・カムリ/ホンダ・ZR-Vのリコールも重なりました。結論から言うと、好業績組に共通する主因は円安であり、これは新車価格を押し上げる方向に働くため、中古車相場を下支えする材料になりやすいとみられます。一方で、ホンダの生産停止長期化とマツダの慎重な通期予想は、供給面でまだ気を抜けない材料が残っていることも示しています。この記事では7社の決算を横並びで整理し、地震・リコールの状況とあわせて、中古車の買い時・売り時への影響を解説します。

※ 情報の鮮度について:本記事は、2026年8月1日〜13日に発表・報道された各社の一次情報(決算短信・各社決算発表資料、国土交通省届出、Toyota USA Newsroomなど)をもとに、期間内の動きをまとめる「振り返り・解説」記事です。個々の発表日は本文の表・脚注に明記しています。個別の発表からは数日〜10日程度経過しているものを含むため、速報ではなく期間全体の整理・分析記事として扱います。

何が起きたか:7社の第1四半期決算を横並びで見る

社名Q1純利益(4〜6月)前年同期比通期純利益予想予想の修正
トヨタ1兆4,770億円+75.6%3兆2,500億円3.00兆円→上方修正
ホンダ4,509億円+129.3%(2.3倍)4,000億円2,600億円→上方修正
スズキ1,836億円+80.0%4,200億円3,800億円→上方修正
三菱自動車14億円+100%250億円+150%予想を維持
マツダ296.3億円黒字転換(前年同期は赤字)90億円据え置き
日産37.6億円黒字転換(前年同期1,157.6億円の赤字)通期販売台数を下方修正
スバル492億円▲10.3%1,300億円据え置き(前期比+43%)

※ 数値は各社の決算発表資料および日本経済新聞・Car Watch・レスポンス(Response.jp)・時事通信等の報道による参考値です。発表日はトヨタ・三菱自動車・日産が8月3〜4日、ホンダ・スズキ・マツダ・スバルが8月4〜5日。日産の「通期純利益予想」欄が空欄なのは、今回の発表で通期利益予想自体は据え置かれた一方、通期の販売台数見通しが下方修正されたためです。

Q1純利益、前年同期比で5社中4社がプラス圏。トヨタ+75.6%、ホンダ+129.3%、スズキ+80.0%、三菱自動車+100%、スバルは-10.3%。日産・マツダは黒字転換のため対象外

表からわかる通り、7社のうち6社が前年同期比で増益、または赤字からの黒字転換を果たしています。特にホンダは前期が1957年の上場以来初めての営業赤字・最終赤字だった反動で伸び率が大きく見える点、日産も8四半期ぶりの黒字転換である点は差し引いて読む必要がありますが、いずれも「経営体力の回復」を示す材料であることに変わりはありません。

為替という共通の追い風、それでも分かれた明暗

トヨタ・ホンダ・スズキの3社に共通するのが、想定為替レートを円安方向に見直したことによる増益効果です。トヨタは想定レートを1ドル150円から160円へ、ホンダは145円から155円へ、スズキも155円から158円へと、それぞれ円安方向に修正しました。海外売上の円換算が膨らむため、円安による押し上げは小さくありません。トヨタの場合、2027年3月期通期の営業利益に対する為替の押し上げ効果は4,800億円と開示されています(中東情勢による下押しなどを差し引いた通期営業利益の上方修正額は4,000億円)。円安の長期化は当サイトで繰り返しお伝えしているように、部材コストの上昇を通じて新車価格の押し上げ要因になりやすく、結果として中古車の相対的な割安感を強める方向に働きます。

一方で、同じ追い風を受けながらも慎重姿勢を崩さなかったのがマツダです。マツダのQ1純利益296.3億円は、通期予想90億円の3倍を超える水準ですが、通期見通しは据え置かれたままでした。米国関税コストが年間を通じて重くのしかかる想定であることが背景とみられ、上半期の好調をそのまま通期に外挿していない点は、他社と一線を画しています。スバルも米関税・原材料高に加えて、群馬製作所矢島工場でのEV量産ライン改修に伴う出荷減が重なり、増収ながら営業利益は前年同期比44.3%減となりました。それでも通期の純利益予想(1,300億円、前期比+43%)は据え置いており、「悪い決算」と単純に片付けられる内容ではありません。

熊本地震、ホンダだけがまだ止まっている

7月28日16時27分ごろに発生した熊本地震(気象庁マグニチュード7.1、最大震度7)による生産への影響は、以前の記事でも触れた通り、トヨタ九州の3工場や愛知・田原工場に及びましたが、これらは8月5〜7日までに稼働を再開しています。日産も8月6日に稼働を再開したほか、三菱自動車・ダイハツも8月上旬までにそれぞれ復旧しました。

これに対してホンダは、部品供給元アステモの被災の影響が長引き、埼玉製作所(シビックを生産)と鈴鹿製作所(N-BOXを生産)の稼働停止を8月19日まで延長しています(8月8〜16日の夏季休業を挟むため実質的な停止日数は埼玉6日、鈴鹿5日)。8月5日の決算発表会見でホンダの川口正雄CFOは、今回の生産停止が通期の販売台数にどの程度影響するかについて「現時点では見通せていない」と述べるにとどめました。本稿執筆時点(8月13日)でも、8月20日からの完全復旧を確約する発表は出ていません。中古のN-BOX・シビックを検討している読者にとっては、新車の納期がさらに延びる可能性がある点は押さえておきたいポイントです。

リコールも重なった2週間

生産面の話題と並行して、リコールのニュースも相次ぎました。トヨタは8月6日、米国で2025〜2026年モデルの「カムリ」約50万8,000台のリコールを発表(詳細はこちらの記事)。始動時にメーター表示が消え、ウインカー等が作動しなくなる不具合で、日本に9月2日発売予定(報道ベース)の新型カムリと生産拠点・世代が共通する車両です。ホンダも7月30日、ZR-V・シビック・アコード計15,873台のリコールを国土交通省に届出(こちらの記事)。いずれも対象は直近の生産分に限られており、国内で流通する大半の中古車には影響しませんが、該当年式・グレードを検討中の方は納車前の確認をおすすめします。

中古車 買い時・売り時への影響

以上を踏まえると、中古車市場への影響は車種・メーカーによって温度差があります。

  • トヨタ・スズキ系(プリウス・アクア・ワゴンR・ハスラー等):決算・生産とも大きな不安材料はなく、円安が新車価格を押し上げる形で中古相場を下支えしやすい状況です。急いで動く必要は薄いといえます。
  • ホンダ系(N-BOX・シビック・フィット等):経営自体は好調ですが、埼玉・鈴鹿工場の稼働停止長期化で新車の納期が延びる可能性があります。新車の納期を気にする方は、状態の良い中古を並行して探しておくと選択肢が広がります。
  • スバル系(フォレスター・インプレッサ等):関税・原材料高というコスト圧力は新車価格の上昇要因になりやすく、中古相場を下支えする方向に働く可能性がある一方、EV量産ライン改修に伴う出荷減も重なっており、供給面はやや不透明です。
  • マツダ系(CX-5・CX-60等):Q1は好調でしたが、通期予想を保守的に据え置いている点は、関税を中心とした先行き不透明感の裏返しでもあります。急激な値動きが起きる材料は今のところ見当たりません。

読者はどうすべきか

  • N-BOXやシビックなどホンダ車の新車購入を検討している方:埼玉・鈴鹿工場の稼働停止長期化で納期が延びる可能性があります。車種比較で中古の候補も並べて検討しておくと安心です。
  • フォレスター・インプレッサなどスバル車を検討している方:新車価格の上昇圧力がかかりやすい局面です。狙い目度マップで年式×走行距離の割安ゾーンを確認しておきましょう。
  • 今の愛車を売却するか迷っている方:円安が長期化し新車価格の改定が続くようなら、中古の相対的な価値は下支えされやすくなります。査定診断リセール予測で現在の車両価値を把握しておくと判断材料になります。
  • カムリ・ZR-Vなど今回リコール対象車種の中古を検討している方:対象は直近の生産分に限られます。国土交通省のリコール情報検索や各社公式サイトで型式・年式を確認したうえで検討してください。

まとめ

  • 2026年8月前半、トヨタ・ホンダ・スズキ・三菱自動車が前年同期比で大幅増益、日産・マツダも黒字転換した一方、スバルだけが最終減益(▲10.3%)でした
  • 好業績組に共通する主因は想定為替レートの円安方向への見直しで、新車価格の押し上げを通じて中古車相場を下支えする方向に働きやすいとみられます
  • マツダは通期純利益予想(90億円)をQ1実績(296.3億円)の3分の1以下に据え置くなど、関税を中心とした先行き不透明感への警戒も残っています
  • 7月28日の熊本地震による生産停止は、トヨタ・日産・三菱自動車・ダイハツが8月5〜6日までに復旧した一方、ホンダの埼玉・鈴鹿工場だけが8月19日まで稼働停止中です
  • 同じ期間にトヨタ・カムリ、ホンダ・ZR-V等のリコールも発生していますが、いずれも直近生産分に限定されており、国内流通の大半の中古車には影響しません

なお、実際の中古車取引価格は車両状態・地域・時期によって変動します。売却を検討している方は、複数社で査定を取ると相場より高くなることもあります。