米国のNHTSA(運輸省道路交通安全局)は2026年9月、ジープ「グランドチェロキー」「同L」「同4xe」を対象に、リアコイルスプリングが外れるおそれのある不具合について、328,381台のリコールを届け出ました。注目したいのは、これが同じ不具合に対する3度目のリコールだという点です。2023年6月の初回、2026年2月の2回目と、2度の修理を経てもなお再発が確認され、対象は2回目の80,620台から一気に約4.1倍に膨らみました(本稿執筆時点=2026年9月10日の情報。一次情報はNHTSAのPart 573届出資料(提出日2026年9月1日)、ディーラー通知・VIN検索対応開始(2026年9月9日)、海外メディア初報(autoevolution、2026年9月7日)です)。中古でグランドチェロキーを検討している方が確認しておきたいポイントを整理します。
何が起きたか:3度目のリコール、対象は328,381台
NHTSAが公開したPart 573安全リコール報告書(NHTSA Recall No.26V562、Chrysler(FCA US, LLC)のメーカー整理番号は89D)によると、対象車両は次の3グループです。
- 2022〜2023年式 グランドチェロキー(標準ボディ):97,477台(生産期間 2021年5月17日〜2023年5月31日)
- 2021〜2023年式 グランドチェロキーL(ロングボディ):215,433台(生産期間 2020年12月5日〜2023年5月31日)
- 2022〜2023年式 グランドチェロキー4xe(プラグインハイブリッド):15,471台(生産期間 2021年8月4日〜2023年5月31日)
合計328,381台です。不具合の内容は、リアコイルスプリングが正しく組み付けられておらず、走行中に位置がずれて車両から脱落するおそれがある、というものです。脱落したスプリングは後続車にとっての路上障害物となり、事故につながるおそれがあるとされています。改善措置は、対象車両すべてのリアコイルスプリング・ロワーアイソレーター(部品番号68668244AA)を対策品に交換する内容です。エアサスペンション仕様車は対象に含まれません。
なぜ3度目なのか:2度の修理でも再発
NHTSAの届出資料に記載された経緯によると、この不具合は今回が初めてではありません。
- 初回(2023年6月・NHTSA ID 23V413/FCA US ID「64A」):FCA USは2023年6月1日、車両規制委員会を通じて安全上の欠陥を認定し、リコールを実施しました。対象規模は今回と同じ328,381台です。
- 2回目(2026年2月・NHTSA ID 26V051/FCA US ID「20D」):初回の修理を終えた車両でもスプリング分離の訴えが相次ぎ、NHTSAは2025年9月30日にFCA USへ予備調査を要請。FCA USは同年11月20日に技術部門(TSRC)で調査を開始し、2026年1月22日に欠陥を認定、2026年2月2日付でNHTSAへ届け出ました。この時点の対象は80,620台で、初回よりかなり絞り込まれていました。
- 今回(2026年9月・NHTSA ID 26V562/FCA US ID「89D」):2回目の修理を終えた車両からも同様の訴えが続き、FCA USは2026年7月24日に3度目の調査を開始。2026年8月6日時点で、この問題に関する顧客対応記録29件・保証クレーム406件(受付日は2023年7月15日〜2026年7月28日に分布、全市場合算)を把握しているものの、事故・負傷の報告はないとしています。2026年8月26日に欠陥を認定し、9月1日にNHTSAへ届け出ました。ディーラーへの通知は9月9日、所有者への暫定通知は9月29日〜10月7日に予定されています。
図の通り、2回目でいったん80,620台まで絞り込まれた対象が、今回は初回とほぼ同じ328,381台まで再拡大しています。倍率にして約4.1倍です。NHTSAの資料では、今回の改善措置は部品そのものの欠陥ではなく組付け・修理作業の不備によるものと説明されており、過去2回の修理でも組付けが安定しなかったことが、対象拡大の背景にあるとみられます。※台数はいずれもNHTSA届出時点の公表値です。
中古車市場への影響:日本の中古相場に実数で見る対象範囲
ここからが中古車を検討している読者にとっての本題です。当サイトの相場データでは、2026年9月時点でグランドチェロキー(全世代・全グレード合算)は流通206台・平均価格289万円、価格帯は75万〜775万円です。このうち今回のリコール対象年式にあたる2021〜2023年式は、2021年式3台(235万〜415万円)・2022年式1台(475万〜495万円)・2023年式19台(375万〜775万円)の合計23台で、現在の流通全体の約11%にあたります。※数値は当サイト独自集計による2026年9月時点の参考値です。
なお、この不具合は無償修理で解消でき、NHTSAの資料上も現時点で事故・負傷の報告はありません。したがって対象であること自体が車両価値を大きく損なう性質のものではなく、納車前に対策品への交換が完了しているかを確認する手続き上のポイントと捉えるのが実態に近いとみられます。
一点、注意しておきたいのは、今回のリコールはあくまで米国のNHTSAに対する届出であり、対象VINも米国仕様車を対象にしたものだということです。ステランティスジャパンは過去にもグランドチェロキーについて複数回リコールを届け出ていますが(2022年12月20日のABS制御プログラム不具合・2,757台、2026年5月14日の後席ヘッドレスト不具合・2車種計1,136台など)、本稿執筆時点で、今回のリアコイルスプリング不具合に対応する国土交通省への届出は確認できていません。日本仕様(右ハンドル)のグランドチェロキーは2025年3月の「ファイナルエディション」(100台限定)をもって国内向け生産を終えていますが、部品共通性までは今回のNHTSA資料からは確認できず、国内向けに同様の届出が今後行われるかは現時点で分かりません。
読者はどうすべきか
- 米国仕様(左ハンドル)の並行輸入車を検討中の方:生産期間(2020年12月5日〜2023年5月31日)に該当する個体であれば、NHTSAの公式サイトで車台番号(VIN)を入力してリコール対象かどうかを確認できます。対象であれば、対策品への交換が完了しているかを納車前に確認しましょう。査定診断ツールで現時点の相場感を、車種比較ツールで同クラスの輸入SUVとの価格差もあわせて確認しておくと判断材料が増えます。
- ステランティスジャパン正規販売の右ハンドル車をお持ち・検討中の方:今回のNHTSA届出は米国仕様が対象ですが、リコール情報は随時更新されるため、気になる場合はステランティスジャパンの窓口や正規ディーラーに車台番号を伝えて確認しておくと安心です。
- 年式ごとの狙い目を探したい方:現行グランドチェロキーは年式による価格差が大きく、狙い目度マップで年式ごとの相場位置を確認できます。同じく輸入車の同日リコールを扱った過去記事「GRスープラ」790台リコール、BMWも同日2万台超もあわせてご覧ください。
リコール対象かどうかは、車台番号(車検証に記載)をもとに、NHTSA公式サイトの「VIN検索」または正規ディーラーの窓口で確認できます。中古車販売店で商談する際も、対象年式に該当しそうであれば、その場で確認・対応状況の照会を依頼して問題ありません。
まとめ
NHTSAは2026年9月、ジープ「グランドチェロキー」「同L」「同4xe」のリアコイルスプリング不具合について、328,381台のリコールを届け出ました。2023年6月・2026年2月に続く3度目で、2回目に80,620台まで絞り込まれた対象が、今回は初回とほぼ同じ規模まで再拡大しています。無償修理で事故・負傷の報告もないため相場全体への影響は限定的とみられますが、対象期間は現行モデルの生産期間の大部分を占めます。米国仕様の並行輸入車を検討している方は車台番号での確認を、日本仕様車をお持ちの方も念のため正規ディーラーへの確認をおすすめします。